「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」"CRAZY LOVE"

史上最凶のストーカーの話。YouTubeにもあがってるみたいなので興味のある方は探してみてください。

バートとリンダ。バートはお金持ちでやや不細工なおっさん。リンダは若くて奇麗な女の子。二人はつきあいはじめるが、バートが妻子持ちだということがバレて破局。諦められないバートは彼女にしつこくつきまとい、あげくに自分が雇ったチンピラに酸を投げつけさせて、彼女を失明へと追いやってしまう。

バートは逮捕され牢獄へ。リンダは失明からくる孤独の日々へ。そして10数年後、バートが出所してくる。そして、彼女の「復讐」が始まる。。

というかまあ、最後に二人はなんと結婚しちゃうというお話で、「復讐」というのは、こんな目の不自由なあたしの面倒をアンタが一生見るんだよ、というリンダばあさんの表現に過ぎず、傍目には二人は仲の良い老夫婦に見えるのではないだろうか。

人間の感情は複雑で、顔の美醜からくる好悪にはじまり、経済面の計算、社会的地位、見栄、義理、その他諸々の思考が入り交じって感情を決定している。リンダがあれほど恐れ、嫌悪していたバートと結婚にいたる感情の流れは、わかるような気もするし、理解を超えたものでもある。

後半はどことなく谷崎潤一郎春琴抄」のアメリカ版とでも言いたくなるような展開で、これを映画にするという企画があるのも頷ける。「愛」は実にとらえどころがなく、「幸せ」も人がそう望むようなかたちではなかなか訪れない。この奇妙な物語は、常識を超えたクレイジー・ラブを描いたドキュメンタリーというよりも、そもそもクレイジーの定義って何よ?と問いかけてくるような気がする。奇妙な恋愛関係は、そこら中にころがっているのだし。

バートもリンダも、少なからず我々のなかにいるのではないか。

春琴抄 (新潮文庫)

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