『死んでも何も残さない 中原昌也自伝』

死んでも何も残さない―中原昌也自伝

死んでも何も残さない―中原昌也自伝

中原昌也の自伝というか、もはや書いてさえいない。語り下ろしだった。

これが新潮社から1470円で出版されて、2刷だったりするんだからまだ出版業界だって終わってないんじゃないか、というかそれだからこそヤバイのか。

共感/妄想の作法を否定し、「妄想を否定する唯一の手段は、小説を書かないこと。つまり現実を物語として構築しないこと」というあたりは素晴らしい。日記ですらそうなってしまうのだから、もはや残された手段は書くのが面倒くさいからななくて語り下ろししかないのだろう。(マジで?)「小説は野菜投げ」とか「文学って何の役に立つのか」とか本当に素晴らしかった。

「こんな40にだけはなりたくなかった!」ってオビにあるけど、俺だってこんなの読む38にはなりたくなかったよ!と言いたくなる本。