『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

震災後、夢中になった読んだ本。凄まじく面白くて、読み終わってしまうのが勿体無いと思いながらページをめくった。

オスカーはドミニカ人で、オタクでデブで童貞で、トールキン指輪物語とかロボテックとかAKIRAとかウォッチメンとかに夢中で、でも二次元じゃなくてリアルの女の子も大好きなのにまったくモテない。好きな映画は『復活の日』で、ラストシーンに号泣する。

そしてオスカーの家族・祖先の物語、独裁政権下のドミニカの物語がオスカーの人生と並走する。現実とファンタジーの関係について、こんなにも生き生きと、ポップに、激しく書かれた小説を初めて読んだような気がする。『自虐の詩』をなぜか思い出したのは、きっとこの世には幸も不幸もなく、ただ、人生には意味がある・・・というところが一緒だなと思ったからかもしれない。

ファンタジーやSFは、現実から逃避する装置であると同時に現実と戦うための栄養源であり、オスカーは正しくその効能を理解している。(もしくはその中でしか生きられない)そして自ら物語を綴る。その行為はとんでもなく感動的であるが、真似をしたいとも思わない。

自分の人生は、オスカーの「短く凄まじい」を「長く凡庸な」に変えただけのものなのかもしれないな、と思いつつ、それでも圧倒的な人生の肯定に励まされるような気さえした。震災後に最初に読んだ本がこれで良かったと心から思う。

オスカーにとって女というのは始まりにして終わり、アルファにしてオメガ、DCにしてマーベルだった。野郎の欲望は強烈だった。かわいい女の子を見れば震え出さずにはいられなかったのだ。何にも起こらないうちから恋に落ちた

あどけない瞳と大きな胸の娘をトルヒーヨから隠すというのは易しいとは言えなかった(まるでサウロンから「一つの指輪」を隠すようなものだ)。

復活の日 デジタル・リマスター版 [DVD]

復活の日 デジタル・リマスター版 [DVD]

新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社文庫)

新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社文庫)