『彼方からの手紙』

5/30。バウスシアターで爆音映画祭瀬田なつき監督作品『彼方からの手紙』。

彼方からの手紙、と来ればスチャダラパーの名曲を思い出さずにはいられないのだが、果たしてその通りにスチャダラの曲からインスパイアされた映画だった。では音楽は全然ヒップホップではない。あの曲を解釈し、拡大し、そして映画にしてしまった感じ。

60分のピンク映画ならこのワンアイデアと物語で充分だし、とてもロマンチックでいいと思うのだが、80分だとちょっと苦しい。もはや学生映画という枠を超えて評判になっている作品だけにそんな感想を思ったりもした。

不動前の風景。スーツにニット帽。部屋でのダンス。現在と未来。消える人間。生まれる人間。「川の始まりってさあー/イエーイ気になる知りたーい」という無邪気でバカバカしく切実な詩情。あの曲の世界がこんなにも映画であることを、あの曲に出会ってからだいぶたって気付いた。

そしてあの曲は彼岸のはなしだったけど、この映画は「こっち側」の物語だった。

お元気ですか? いかがお過ごしでしょうか
こっちは然して問題もなく みんな元気でやってます
暑いと言えば暑いのか 寒いと言えば寒いような
一言じゃとても言えないけど とっても快適なんだよ


澄んだ空気 青い空 山の背に沈む夕焼けなどは
うっかりすると涙を流すほど 本当に素晴らし過ぎるんだよ
木々からこぼれる光はまぶしく 僕はその影だけを追ってる
気が付くともう夜になってる そんなこともしょっちゅう


毎日 みんなで口にするのは 「ああ あいつも来てればなあ」って
本当に僕も同感だよ それだけが残念でしょうがないよ


スチャダラパー『彼方からの手紙』