『まだ楽園』

水曜日。池袋シネマロサで佐向大監督『まだ楽園』。

80分の短い旅。不穏な旅なのか、間抜けな旅なのかよくわからないまま車は走り続ける。ママチャリの二人が時折現れては消えていく。女は優しく、男はカッコつけてるのか、何もわかってないのかいつも不安定。時折爆音で流れるヤケクソの音楽。暴力もセックスも(表面的には)ない。更には夢も希望も、多分ない。

そして決定的なことは常に違う場所で起こっているということ。自分は部外者であり、被害者であり、傍観者であるということ。その場所はある意味で「楽園」であり、そこにいる限り我々は何も引き受けることなく、ただ車の中から外の景色を見ていればいい。しかし青春の終わりというのは、やはり楽園から一歩踏み出していくしかないし、決定的なことを今、ここで起こすしかないのだ・・・ということ。ダラダラした日常も、そこからの跳躍も、等しくスリリングに描かれていてずっと目が離せなかった。

『まだ楽園』すごくいい題名だと思う。終演後のトークショーで「最初は『ラッキー・エイジ』だった。。」と監督が言っていたのかなんだか可笑しかった。