『イエローキッド』

土曜日。ユーロスペースで『イエローキッド』。

ツライ現実×アメコミのヒーロー、で主人公が爆発する映画だとばかり思っていたら、架空の世界よりもかなり現実の方に軸足のあるしっかりした作品だったので驚いた。『イエローキッド』の世界と現実が交差するのは一瞬だけで、それはとてもリアルなことなんだけど、それでは余りにも田村が救われないし、そんな安易なカタルシスなんか与えてやんねーよという宣言なのかもしれないが、あれでは余りにも「現実」の一方的な勝利過ぎて悲しくなってしまった。

ただし、あくまでルサンチマンを漫画の創作に向かわせる服部に対して、暴力の合法的な発露としてのボクサーを目指しつつも、そこで袋小路に入ってしまった田村がほんの一瞬だけ暴発し、しかもそれをまた記述する服部という(いつまでたっても傍観者であろうとする)構造はとてもいい対比だと思った。

僕らはいつも行動する人/傍観する人のどちらかを無限に行き来し、選び続けている。少なくとも、絶対に記述する人であり続けようとする服部が幸せになれる可能性はかなり低いが、死んでしまう可能性もこれまた低いんだろうな。。

主人公二人よかった。町田マリーよかった。でんでん、よかった。おばあちゃん役の人もよかった。「ダウンタウンガキの使いやあらへんで」で浅倉南をやってたおばあちゃんかと思ったが、違うようだ。