『惑星ソラリス』
木曜日。シアターイメージフォーラムでタルコフスキー映画祭2010『惑星ソラリス』。
初めて(もちろんテレビで)観たのは高校生の時で、首都高のシーンにもびっくりしたし、ラストシーンにもやられた記憶がある。息苦しくて、こわくて、静かで、今まで自分が知っているSFとか映画というものとこんなにも異質な世界があるのかと、呆然として引き寄せられた。もちろんすぐにハヤカワの「ソラリスの陽のもとに」も読んだ記憶が。当時、好きな映画は『惑星ソラリス』と言うと周囲はたいてい知らないのでいい気分だった(恥ずかしい記憶)。
2010年に観てもやっぱりソラリスはすごかった。今観ると不親切どころかとっても親切な映画で、タルコフスキーなりの『ソラリス』を理解しようとする試みが映画になっている感じがして面白い。レムはそんなタルコフスキーの解釈にひどく不満だったという。
そして戸口に出てきた父に対して、クリスはひざまづく・・・・。このエピソード −もちろんレムの原作にはない−は、タルコフスキーが最後に結局、異質な他者との対峙を止めて、限りなく懐かしいものに回帰しようとしたことを示している。ところが、レムの原作におけるクリスはそういった回帰をせずに、異質な他者に対する違和感を保持しながら、それでもなお他者と向き合おうとしているのである。
でもそのタルコフスキー的理解というのも、映像としてみると甘ったるい感傷ではなく、ソラリスの海の中に相対化された一つの島として表現されているので、まあ愛と記憶についての物語として解釈したい人にはそのように、そうでない人にはもっと絶望的な断絶として、好きなように観ることが出来る映画なんだなと。
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