ジャック・ロジエのヴァカンス『オルエットの方へ』

ユーロスペースジャック・ロジエのヴァカンスオルエットの方へ』。

女子3人のヴァカンス。キラキラしまくってて、笑い声はけらけらと響き、それはもう楽しそうで、なんでこんなものを映画館で見せられにゃならんのだ!とオッサンたる俺は憤慨しつつもなぜか画面から目が離せない。

ジョエルの上司のジルベール(立ち位置的には世界のヘイポーみたいな感じ)が出てくると、今度はこれがキラキラの女子3人による冴えない男いびり大会になっていく。ウナギのシーンとかひたすら馬鹿みたいで目が離せない。

イケメンのヨット乗りが出てくると、一瞬画面は緊張感を帯び、恋物語に変貌か?と思わせるが、やっぱり映画が集中力を発揮するのは、恋愛うんぬんではなく、延々続く美しいヨットのシーンや浜辺での乗馬だったりして、それでもやっぱり目が離せない。

要は、なんにも起こらないのだ。最初から最後まで、そこにあるのは海と、空と、ヴァカンスと、女3人と、男2人が遊んでいるだけ。そんな映画が161分もあるのだ。しかもなぜか目が離せない。途中から、おそらくこの映画には何も起こらないということがわかって以降、どんどん目が離せなくなる。なんなんだろう?あの感覚は。物語の終わりが映画の終わりではなく、単なるヴァカンスが終わるだけ。だけどそこには明瞭な「終わり」の感覚がある。何も得ていないし、何も無くしていないのに、喪失感だけはある。

思い出した映画『地獄の黙示録』『ソナチネ』『怒る西行』。スチャダラパーの『彼方からの手紙』のようでもある。

結論:素晴らしかった。