「アバター」

12月30日。109シネマズ川崎でジェームズ・キャメロンアバター」。IMAX 3Dで見たくてわざわざ川崎まで行った。今年映画館で観た映画のちょうど120本目だった。

予告編が解禁された当初は、今更「アバター」とかってタイトルで、青い異星人の映像を見たときは、うわーキャメロンもやっちゃったなーという感じだったのだけど。映画を観てしまったらそんな気持ちはどこかへ行った。すみませんキャメロン先生。まさに映画をめぐる「技術」の結晶が堪能出来る2時間40分。

「惑星パンドラ」という中学生がはじめて書いたSF小説に出てくるような星の名前も、そこに住む現住人「ナヴィ」のあまりにも「地球」な感じの生態や、彼らのあまりにも類型的過ぎる自然信仰も、全てのダメなところが徹底的なテクノロジーの浸透によって実現されることで反転して輝いている。

いやこれは、現実世界の「つくりもの」としての映画という構造と同じく、地球のアバターとしてのパンドラ、人間のアバターとしてのナヴィ・・という風に思えば、確信犯的に(つまりはあえて単純過ぎる構造を作ることで)、この世界への観客の没入感を高めようという企みなのだろう。

だからIMAX 3Dで展開される160分は、まさにその世界の目撃者としての160分だった。物語は「風の谷のナウシカ」や「もののけ姫」彷彿とさせ、パンドラの動物たちが王蟲やその他多くの腐海の蟲に見えた。樹から伸びる蛍光色の触手や空を飛ぶシーンもそう。(だけどきっと宮崎駿はこんなの私の映画とは違いますよと笑って否定するだろう)

そしてパンドラの動植物が持つ神経組織が、情報のアップロードやダウンロードが出来るネットワークとして機能している・・・というあたりは全然宮崎アニメではなく、むしろサイバーパンク的な情報至上主義の世界観が垣間見える。魂を新しいハードウェアに載せ替えることまでやってしまうのだから。

あと、どうでもいい話。「エイリアン2」では、シガニー・ウィーバーがパワーローダーに乗ってエイリアンと戦うシーンが最高にカッコ良かったが、この作品のパワーローダーもちゃんとカッコいい。巨大な空飛ぶ空母や飛行機も、まさにエイリアン2的デザインだった。遠未来なのに、ものすごく今と地続きな感じの兵器デザインというのはやっぱりいいよね。あと、マックス博士を演じていたのは「スペル」に出てた占いのオッサンで、ちょっと嬉しかった。

映画は「アバター」でまた一つ進化したのだと思う。「ジュラシック・パーク」だったり、「レザボア・ドッグス」だったり、(今年だと「ライブテープ」だったり)、映画は色んな方向へ向かって進化する。そういう歴史に残る1本。