山城新伍とその時代「俗物図鑑」
火曜日。シネマヴェーラで山城新伍追悼特集「俗物図鑑」。
筒井康隆(=おそらく俺が、P.K.ディックと並んで今までの人生で一番読みふけった作家)原作。狂った原作と同じく、映画も見事に狂っていた。山城新伍以外にほぼまともな役者は登場せず、平岡正明、巻上公一、南伸坊、山本晋也、四方田犬彦、大林宣彦、田口トモロヲ・・・これで劇映画をまるまるやりきってしまうのだから、無謀としか言いようがない。しかしながらその「やりきった感」にあてられて、なぜか爽やかな気分になった。
世間からは圧倒的に非難される反良識的批評家たちが、最初はマスコミで活躍した後に、やはり世間からの攻撃を受けて梁山泊に立てこもり、反体制分子として排斥されていく・・・というストーリーは、それ自体が今でも充分に通用する批評であり、マスコミとマスコミが体現するところの「世間」の俗悪を暴いていく。
我らはみな俗物である。現代はその俗物たちが、自分以外の誰かに、わかりやすい俗物を演じてもらいたがっていて、そのためのシステムが整備されている。その演じられた姿の滑稽さに、腹を抱えて笑うのである。そこに映っているのが自分であるとも理解していようがいまいが。
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1976/04/01
- メディア: 文庫
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