山城新伍とその時代「俗物図鑑」

火曜日。シネマヴェーラ山城新伍追悼特集「俗物図鑑」。
筒井康隆(=おそらく俺が、P.K.ディックと並んで今までの人生で一番読みふけった作家)原作。狂った原作と同じく、映画も見事に狂っていた。山城新伍以外にほぼまともな役者は登場せず、平岡正明巻上公一南伸坊山本晋也四方田犬彦大林宣彦田口トモロヲ・・・これで劇映画をまるまるやりきってしまうのだから、無謀としか言いようがない。しかしながらその「やりきった感」にあてられて、なぜか爽やかな気分になった。

世間からは圧倒的に非難される反良識的批評家たちが、最初はマスコミで活躍した後に、やはり世間からの攻撃を受けて梁山泊に立てこもり、反体制分子として排斥されていく・・・というストーリーは、それ自体が今でも充分に通用する批評であり、マスコミとマスコミが体現するところの「世間」の俗悪を暴いていく。

我らはみな俗物である。現代はその俗物たちが、自分以外の誰かに、わかりやすい俗物を演じてもらいたがっていて、そのためのシステムが整備されている。その演じられた姿の滑稽さに、腹を抱えて笑うのである。そこに映っているのが自分であるとも理解していようがいまいが。

俗物図鑑 (新潮文庫)

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