「下女」

金曜日。シネマート六本木でキム・ギヨン特集上映「下女」。

1960年の作品。ついにずっと観たかった「下女」を観ることが出来た。

なんという怪作。メロドラマ、サスペンス、ホラー、コメディ、・・・なんとも言えない異様な世界にやられた。ラストはずっこけそうになるし。

キッチン、居間、寝室、階段、女中部屋、ピアノ部屋・・・と丁寧に描かれた「家」がその普通の佇まいのまま徐々に逃れられない地獄に変容していく様子は圧巻だった。女中部屋とピアノ部屋を結ぶベランダが魔界との接点。階段も人間界と地獄の切り替えスイッチのようで、そこに人物が立っているだけで、何か事件が起きずにはいられないようなムード。

仕事を頑張るということ、家を買うということ、ちょっと贅沢をするということ、女中を雇うということ、子どもを育てるということ・・・全てが地獄への入り口のようで、だったらどうすればいいんだよ・・と、ほとんど何も悪いことをしてないのに地獄へ向かっていく主人公は言いたくなるだろうが、この映画ではそうなんだから仕方が無い。

男は馬鹿で軽はずみで、心が弱い。女は意志が強く、なにかを最後までやりとげようとする。下女の狂気に恐怖するよりも、彼女をそのような状態へと向かわせる目に見えない力の方が恐怖のような気がした。

(あと、異論は大いにあるだろうが、この下女はとっても可愛くて魅力的だ。それがこの映画の魅力にもなっている、はず。。自信ないけど。)