「イングロリアス・バスターズ」

月曜日。六本木ヒルズで「イングロリアス・バスターズ」。

素晴らしい。今年観た映画の中でも、ベストのうちの1本。今でも思い出すたびに素晴らしくって泣きそうになる。

タランティーノよりも映画をうまく作る人や、芸術的に優れている人は沢山いるだろう。だけどタランティーノほど映画を作っていること自体が楽しくてしょうがないんだ・・と観る側に思わせる映画監督はいないんじゃないかと思う。バンドでいうとブルーハーツの衝撃というか、やってる自分たちが一番楽しい、自分たちが好きなものは全部ぶち込みたい。そしてやれることをやる。いつまでたってもファン目線のまま、という感じ。

映画はいつだって弱きもののための嘘で、それに救われてきたものたちは、作り手に全力でその嘘を守って欲しいと思っている。イングロリアス・バスターズは現実の復讐を、映画で成し遂げたのだ。暴力を単なる暴力で返すのではなく、映画という暴力を世に放つことで復讐するのだ。最初に並ぶバスターズのメンバーたちの情けない表情だけでもう泣けてしょうがなかった。ブラピじゃなくて、彼らこそがこの映画の主役。そしてもちろん復讐の主役は少女。彼女は映画の中で一人の女優に成長する。

そしてチャプター5の魔法。人々は死にゆくが、映画は残る。そのことの悲しさと、誇らしさが全ての俺のような映画ファンの涙を誘う。映画は嘘でいい。嘘の中ででしかヒーローになれず、嘘の中でしかカッコ良く死ねないなら、がんばってその嘘を作ってやるぜ、とタランティーノが言っている。