「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」

日曜日。吉祥寺バウスシアター「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」

これまた号泣。マイケルよりも泣いたかも。リップスの表情はどこか明るくて、でも悲しそうで、間抜けで、愛おしくて・・・ラスト近くの日本のシーンで涙腺決壊。余りにも美しい友情。あまりにも優しい家族たち。あまりにも真っすぐなロックスター/音楽への愛。本当に彼らは幸せだと思う。

あと、これはカナダという国が素晴らしいのか、給食の配達人や工事現場の労働者をやりながら、ライブもレコーディングも、ツアーで5週間(!)の休暇というのも普通に出来て、一戸建ての家に住み、奥さんもいて、子どもともちゃんと遊ぶ時間があるというのが・・ちょっと日本では難しいんじゃないかと思うのだけど、そのあたりの国による違いというのはマイケル・ムーアの映画じゃないから分からなかった。そして彼らなら、年金生活に入ってもバンドをやめないだろうと思うとすごく羨ましくなった。

ロックで有名になることを痛切に願っているリップスとロブの願いは50歳になっても叶わず、マイケル・ジャクソンは物心ついた時から死ぬまで有名だった。どっちの人生もたいへんだ、しんどいだろう。だけど、だけどそうやって強烈なハイやロウの中で力強く生きている人たちの姿を見て、そんな中でこそ得られる充実や満足や悲嘆や痛みのことを想像すると、凡庸極まりない生活を送っている僕は思うのだ。もっとハイやロウにまみれた、激しい人生を生きてみたいと。本心かどうかは自分でもわからないけど、そういう思いを誰もが持っているから、この映画は人の心を打つのだと思う。