「安藤昇の我が逃亡とSEXの記録」
1976年公開。監督:田中登「安藤昇の我が逃亡とSEXの記録」。
今回もっとも見たかった映画。本人が演じてるというからどんだけ素人演技の珍品かと思ったら、堂々の役者であり(それもそのはずで、この映画の時点では俳優として活躍していたとのこと)、石橋蓮司や蟹江啓三、小池朝雄などよりも猛烈なスターのオーラがあってびっくりした。
ヤクザ、犯罪、逃亡、愛人7人・・・常人には映画でしか出来ない経験。この映画には暴力はあまりなくて、かわりに強烈な(笑)セックスとなんとも言えない虚無的な逃亡が描かれる。本当に逃げたいだけなら愛人宅を転々とするのもおかしな話しだし、それはただやりたいだけなんじゃないかと思ったり、でも映画ではもちろん愛人たちとの別れを惜しむような感傷もあったりした。SEXの記録と銘打つだけあって、そのあたりは相当にねっとりしてて、さすがに本人。
パトカーの中でつぶやく最後のセリフはすごい。「天皇陛下になったみたいな気分だよ」って。バイキンの意地。今の映画にこのセリフが入る余地はあるだろうか。