トロピック・サンダー/史上最低の作戦

土曜日。朝日ホールでの東京フィルメックスのあと、同じビルの丸の内ピカデリートロピック・サンダー/史上最低の作戦

冒頭のフェイク予告編が見事。豪華なワルふざけ。これが面白くなかったらきっとこの映画には入れない。

「自虐」というのは笑いの中でもそれなりのセンスと品位が必要なものだと思うのだけど、この映画での俳優たちの自虐っぷり、そしてハリウッド映画でありながらハリウッド映画を徹底的に貶めるという自虐の作法は最高に品位のあるやり方だと思う。映画をとることについての映画でありつつ、見る側には最高のおもてなし(特にトム・クルーズは最高だ)で楽しませるという、批評性と娯楽性がこんなにもずっばりハマった映画はそうはない。

(まったく余談だが、最近だと「ガキの使い」で山崎邦正プロデュースのPerfumeのパロディと、なんつーの?日本のレゲエだかヒップホップかわからないアホみたいなヤツを模した曲が秀逸で無自覚な批評性を有していたと思う)

冒頭、アルトマンの『M★A★S★H マッシュ』 みたいだなと思ったら、素晴らしいナパーム爆破は「地獄の黙示録」で、続けてベン・スティラーによるアホみたいな「プラトーン」で一気につかまれた。音楽はストーンズの「悪魔を憐れむ唄」にバッフォロー・スプリングフィールドの「For What It's Worth」と素晴らしく69年っぽい感じ。(一応、映画内での映画の舞台が69年だからか)

「ウソが本当に」というのは、あらゆる映画で頻繁に語られるテーマであるけれども、この映画はそのテーマを見事に語り直している。ここで彼らが救うのは、ハリウッドスターを本物のヒーローと勘違いした優しき弱者ではなく、彼ら自身である。「映画」はもはや他人を救っている余裕すらないのだ。それほどまでに、映画をつくるってのはツライ(かつオモロい)んだよって言われるような気がした。あと、カントクなんていなくても映画が撮れる、ってあたりがまさに監督としてのベン・スティラーの最大の自虐であり、かっこいいところだと思う。