ルートヴィヒ

土曜日。新文芸座ルキーノ・ヴィスコンティ「ルートヴィヒ」の完全版。なんと休憩挟んで4時間!

とんでもない映画でした。4時間にわたって完璧な世界が構築されるが、この物語は英雄潭でも巨大カタストロフでもなく、ひたすらに一人の男の孤独と死への道が描かれる。「童貞王」とも言われた王様の生涯は、美と孤独と狂気と報われない愛ばかりが溢れていて、物語が進むほどのその袋小路はどんどんと狭まっていく。なんという陰鬱な物語。しかしその陰鬱さと対照的に、ワーグナーノイシュヴァンシュタイン城や、彼が全力をあげて(おそらくは政治や戦争などの現実からの逃避のために)作り上げた芸術の世界はなんとも言えない華麗さに満ちている。

この映画自体も、そのようなルートヴィヒの生涯を描くことで、ルートヴィヒの夢をなぞってみせている。現実から徹底的に目を背けること/夢の王国を作ること、映画を作ることはそういった叶わぬ夢を見ることであるが、その夢は35年を経た今でも完全な形で池袋の街で再現されうるのだ。映画がそのようなものであることに、今更ながらに気付かされた一日。

しかし、4時間というのはとんでもない長さだ。げっそり疲れたが、この映画が年配者を中心にほぼ満席近くになるのだから、やっぱすごい映画館だよ、新文芸座

wikipedia:ルートヴィヒ2世_(バイエルン王)