大菩薩峠 完結編

大菩薩峠 完結篇 [DVD]

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そしていよいよ物語は完結編(つーか全然完結になってないけど原作が未完だからしょうがないのか)へ。舞台は甲府。新キャラはいかにも幕末にいそうな理知的な殿様。竜之助の新しい女は顔に痣を持つお銀。第一作で始まった因果が映画の中で拡散し、また大菩薩峠に集まってくるような感じ。宇津木兵馬と机竜之助は、銭形警部とルパンの関係のようだ。お互いが追いつ追われつ、いつしか奇妙な感情が生まれている。

宮崎駿が5歳児のための映画を作り、押井守が若者に向けてのメッセージだという映画を作り、相手にしてもらえない定年を過ぎたようなおじいさんは内田吐夢特集へと足を運ぶのだろうか?しかしこの狂気とタナトスに満ちたメロドラマが、なぜかポピュラリティを獲得し、未だに多くの喝采を浴びるというのもまた映画が持つ不思議な魔力の一つである。机竜之助は完全に狂った殺人狂なのに、なぜかその狂気を鎮めることが、討伐というよりも治療のような優しい意味あいを持ち始めるのがこの完結編。ラストは明らかに完結でもなんでもない。この物語に終わりなどないという明確なサボタージュだ。この無間地獄を皆が確認することで、映画はとりあえずの終幕を向かえる。

自分のことを考えてみると、このまま歳をとっていくことだけは確実で、確実でないのは「どのように歳をとるか?」ということだ。机竜之助は化け物と言われ、殺戮を繰返し、無明の闇を彷徨いながら、それでも全く死にそうにない。このしぶとさがこのキャタクターに実に悪魔的な魅力が宿る由縁なのだろう。こんな風に生きたいとはまったく思わないが、でもやっぱり意味なんかなくても人は生きようとするのだ。理由なき殺戮は、理由なき生の裏返しである。大菩薩峠は、そのような魂を救済する場所として、反転した聖地として存在している。