石の花

石の花 上 (光文社コミック叢書“シグナル” 11 坂口尚長編作品選集 1)

石の花 上 (光文社コミック叢書“シグナル” 11 坂口尚長編作品選集 1)

石の花 中巻 (光文社コミック叢書“シグナル” 12 坂口尚長編作品選集 1)

石の花 中巻 (光文社コミック叢書“シグナル” 12 坂口尚長編作品選集 1)

石の花 下巻 (光文社コミック叢書“シグナル” 13 坂口尚長編作品選集 1)

石の花 下巻 (光文社コミック叢書“シグナル” 13 坂口尚長編作品選集 1)

上中下巻、トータルで1300ページ、お値段も3冊合わせて1万円近く。読み応えもガッシリしていて、これほど濃密な漫画を読むとどっと疲れるから、間違っても暇つぶしに買ってはいけない。そういう覚悟のいる本である。これも夏休みの読書に向いているなあ。

アドルフに告ぐ」と並ぶ傑作というのはたやすい。ただし、そういった安易な賛辞を許さないような、それほどの覚悟がページの隅々から伝わってくる作品である。綿密な取材に基づいたストーリーだけでなく、まるで「カラマーゾフの兄弟」の大審問官の章のような言葉が飛び交うシーンも戦慄するほどの迫力だし、絵は手塚治虫から大友克洋とか安彦良和を思わせるような、見事なカットの連続である。

最終章のタイトルが「まなざし」。まさにこの物語の本質をついたタイトルのような気がする。我々は何かそこにある現実を見ているのではない。我々のまなざしがその対象を現実にするのだ。見ること/語ることが、とりもなおさず世界を作る行為であるということ。世界は、壊したり攻めたり守ったり奪い合ったりする為にあるのではなく、「創る」ためにあるのだ。