大菩薩峠

大菩薩峠 [DVD]

大菩薩峠 [DVD]

こちらは1957年。片岡千恵蔵主演の堂々たるカラー作品。ニュープリントでの上映。随分前から見たかったのだが、やっと見ることが出来た。噂に違わぬ傑作モンスター映画。机龍之介の理由のない殺人鬼ぶりがすごいのだが、映画は最初っからそれを説明することを放棄しているかのように、彼をめぐる周囲の人物のメロドラマ的動きばかりを描写し、肝心の主人公はぐーたら酒飲んで寝ているか、人殺しをするくらいという見事に突き放した構成になっている。

だが、その千恵蔵の死んだような腐った視線が素晴らしく、ベタなドラマがかえって机龍之介の得体の知れなさを際立たせ、結局のところ彼が主役以外の何者でもないという映画である。(若き日の中村錦之助の美少年っぷりにも驚愕するが、なんといっても千恵蔵がかっこよすぎる)

目的がなく生きていて、そして強い・・という存在が一番恐ろしいし、かつ抗いがたい魅力がある。