絲山秋子『逃亡くそたわけ』

逃亡くそたわけ

逃亡くそたわけ

絲山秋子強化月間継続中。『逃亡くそたわけ』。Theピーズの歌が繰返しインサートされる。「脳ミソ半分とっちまいたい!」とか「やっとハッピー」とか。

そしてカーステから流れる「日が暮れても彼女と歩いてた」はライブでは「気が触れても彼女と歩いてた」って歌われるんだよ・・となごやんが話す。

これはあたし達の歌だ。テープを何度も巻き戻して聴いた。
気分だった。もう、鹿児島までずっとこの曲でいい。ボロ車に合ってるし、だんだん喋るのも億劫になってきた。もうすぐ行き詰まるのが見えているからだ。その先が憂鬱だからだ。あたしはすぐに覚えた。そして歌った。
熱いから歌うのだ。怖いから歌うのだ。
亜麻布二十エレは上衣一着に値する。
気が触れても彼女と歩いてた。

まさにTheピーズの歌がロードムービーになった瞬間。やけくそで超かっこいいぜ。

東アジア選手権 日本代表 1-3 韓国代表

日曜日。国立競技場で久しぶりのサッカー。国立で日韓戦を観るのはひょっとすると97年のアジア最終予選の時以来かもしれない。前の2試合が全然お客さんが入ってなかったのでガラガラなのかなーとのんびりしていたら、なんとさすがに日韓戦、席はかなり埋まってた。みな考えることは同じなのね。

試合はあんな感じで、まあ歯がゆいこと歯がゆいこと。平山も見たかったんだけど、結局出番無し。岡田監督がなかなか交替選手を入れず、最後に佐藤寿人が出て来たあたりで、諦めて帰る人が出始めてた。

あ、でも試合中にtwitterを眺めながら観戦したのは初めてかもしれない。笛がよく鳴る試合だったので、その合間合間にiPhone見ては、いろんな人のtweetを見ながら・・というのは面白い感覚だった。周囲には生で見ている人がいて、iPhoneには違う席で生で観ている人や、テレビで観ている人がいる。たった一つのボールが、国立競技場の上を舞う何万もの言葉になって拡散していく感じ。ワールドカップの時はどうなるんだろう?

『まだ楽園』

水曜日。池袋シネマロサで佐向大監督『まだ楽園』。

80分の短い旅。不穏な旅なのか、間抜けな旅なのかよくわからないまま車は走り続ける。ママチャリの二人が時折現れては消えていく。女は優しく、男はカッコつけてるのか、何もわかってないのかいつも不安定。時折爆音で流れるヤケクソの音楽。暴力もセックスも(表面的には)ない。更には夢も希望も、多分ない。

そして決定的なことは常に違う場所で起こっているということ。自分は部外者であり、被害者であり、傍観者であるということ。その場所はある意味で「楽園」であり、そこにいる限り我々は何も引き受けることなく、ただ車の中から外の景色を見ていればいい。しかし青春の終わりというのは、やはり楽園から一歩踏み出していくしかないし、決定的なことを今、ここで起こすしかないのだ・・・ということ。ダラダラした日常も、そこからの跳躍も、等しくスリリングに描かれていてずっと目が離せなかった。

『まだ楽園』すごくいい題名だと思う。終演後のトークショーで「最初は『ラッキー・エイジ』だった。。」と監督が言っていたのかなんだか可笑しかった。