車谷長吉『飆風』
- 作者: 車谷長吉
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/06/10
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 7回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
一番面白かったのは『密告(たれこみ)』。映画にしたらめっぽう面白くなりそうな、二人の男と女たちと、金やら名誉やら、人間の持つイヤらしさがギッシリ詰まった玉手箱のような短編。
私の感性はと言えば、日がな一日、へたな長唄三味線を掻き鳴らしては喜んでいる男、口先ばかり、義理は立ててもお義理は立てぬと息まいて見たり、親切の押し売りに至っては日常茶飯のこと、のみならず、何事にも知ったかぶりして、節はなく、時には般若心経の章句などしたり顔してうそぶいて見せる、という風な具合で、それよりも何よりも、このように「分かってちょうだい!」式のふざけた自己宣伝をやらかして見たり、「さらば、不潔な純血主義よ!」という風な、見栄の皮が突っ張った、逆説を弄んでは、独り悦に入っている、というのが本当の私の姿でしょう。
たまらん言い回しの連続。見事なフロウ。