フィリップ・K・ディック『未来医師』

未来医師 (創元SF文庫)

未来医師 (創元SF文庫)

ディックの『未来医師』読了。ずっと"Dr. Futurity"のタイトルで未訳の一覧に載ってた小説。こうやってちょっとずつ、ゆっくりではあるが全部の小説の翻訳が出版されてきている。ありがとう東京創元社さん。あっ、なんだTwitterアカウントあるじゃん。@tokyosogensha。あとは"Vulcan's Hammer" と"The Crack in Space"。

本作はもう、これでもかってくらいに時間SF。しかもディック特有の裏返しの世界(非白人中心文明、医療行為が重大な罪という未来社会)が描かれて、その中で更にその社会をひっくり返そうとする勢力が出てきて、その説明もそこそこに、遠い過去への時間旅行とかタイムパラドックスとかが散りばめられてテンヤワンヤの展開になっていく。アイデアの数はすごいし、ちゃんとそれなりに辻褄も合っている。しかもなんとなく主人公が「軽い」ので、読んでてとってもラク。重度のフィルディッキャン(Phildickian)なら、楽しめること間違いなしの一編。

これ、映画化するなら間違いなく主人公はロバート・ダウニーJr.で。肌を黒くぬって白人であることを隠すとこ(まさに『トロピック・サンダー』)とか、どっかお気楽な医師像とか、完璧なキャスティングだと思う。