トマス・M・ディッシュ『歌の翼に』

歌の翼に(未来の文学)

歌の翼に(未来の文学)

国書刊行会の<未来の文学>シリーズ、トマス・M・ディッシュ『歌の翼に』読了。

少年期、初恋、刑務所、歌、飛翔装置、戻らぬ妻との歳月、貧乏、男娼生活、成功・・・・伝説的名作と帯にあるのは嘘ではなかった。デタラメな世界、暗い未来のアメリカの物語が、どうしようもなく現実のものとして胸を打つ。ダニエルはわたしであり、あなただ。

飛ぶことを願いつつ、飛べない。そして歌を歌い続けるダニエル。その姿が何を象徴してるのかは、そのまま読者が何を願っているかを映し出す。つまりそれは人によって違うだろうし、僕が何を思い起こしたかはちょっと秘密にしておきたい。