『もうひとつの世界』

4月29日。有楽町朝日ホールでイタリア映画祭2010。ジュゼッペ・ピッチョーニ監督作品『もうひとつの世界』。

クリーニング屋のオッサンと修道女の物語。まったく接点のなさそうな二人が事件によって無理矢理に交流させられてしまう。

メインの二人だけじゃなくて、冒頭の怪し過ぎるジャージの男とか、クリーニング屋で働いている女の子たちとか、バーで寂しくてみんなに電話番号を教えてる女性とか、ちょっとだけ出てくる登場人物がみな魅力的で、仕事と家を往復する以外の「世界」がどれだけ知らない人であふれかえっていることに気付かされる。その過程が実に丁寧で感動的。

エルネストが店の女性に電話して、(ずっと覚えようとしなかった)名前を呼ぶところが素晴らしかった。大きく境界を越えていく映画ではなく、小さく線を踏み越えようとする映画。日常の風景を少しだけ変えようとする映画。好きな映画です。