『SR サイタマノラッパー』

4月12日。新宿バルト9で『SR サイタマノラッパー』。去年ロサで観て以来二度目。凱旋上映という言葉がまさにふさわしい。月曜で冷たい雨の降る夜だったが満員だったし、IKKUもTOMもTECも終演後に感激冷めやらぬ観客たちを出迎えてくれてまた感動。

去年観た時は気付かなかったが、この映画もまた「不在」についての映画であると思った。「存在していない」ことにより逆にその存在を際立たせること。この映画においてはそれはもちろん「ラップ」であり、彼らが本当に意味で、オーディエンスに向けてライブを行うシーンは1シーンもないのである。歌うべき歌の不在、叩きつけるべきリリックの不在。みひろのAVは近いようで遠い東京での記録であり、彼女もやはり「ここ」には不在である。何もないことを思い知ったIKKUは、抽象的な世界の出来事ではなく、「自分」をフリースタイルでたたきつける。ラストがあんなにも感動的なのは、彼がついに語るべき言葉を発見したからであり、長い「不在」が、ついに存在に変わるかもしれない端緒を見るからである。