『キングス&クイーン』

キングス&クイーン [DVD]

キングス&クイーン [DVD]

3月21日。東京日仏学院フランコフォニー・フェスティバルでアルノー・デプレシャンキングス&クイーン』。

150分もある映画だけど、まったく飽きずに観ることが出来た。男と女と子供と、父と母と姉と・・・つまりは家族の物語。男たちは滑稽で、惨めで、怒りっぽくて、そして死んだり生きたりする。女は淡々とやるべきことをやる。

上映後のトークショー黒沢清アルノー・デプレシャン、主演のマチュー・アマルリックという3人で行われた。これが実に充実した内容で、黒沢清監督が「たった150分の体験なのに、とても長い小説を読んだような、もっと長い時間その物語の中にいたような、そんな錯覚を覚えるような映画体験」と評していて、まさにその通り!と頷いたのだった。アルノー・デプレシャンも「1時間を過ぎたあたりから観客に飽きられるんじゃないかという恐怖から、どんどん映画に物語を詰め込んでしまう」というとおり、自由に時間を行き来して、急にクローズアップしたり、さらっと次に言ったりで、その語り口は実に巧みで豊かだった。

そして映画を結論や教訓やメッセージでとらえようとする人には向かない映画だと思う。ただそこにあるのは、ありきたりな、そして唯一の物語。言葉は借り物だったり、オリジナルだったり、様々な色彩を帯びる。そして終わりのシーンを見終えた時に、深く静かな満足を得るのである。