『六つの教訓物語第五話 クレールの膝』

ユーロスペース「エリック・ロメール追悼特集上映 アデュー ロメール」。『六つの教訓物語第六話 クレールの膝』。

アヌシー湖畔のリゾート地。結婚を間近にひかえた35歳の外交官ジェロームは、ふたりの少女、ローラとクレールに出会い、いつしかクレールの形のよい膝に執着するように…。自己分析的な連作にあって主人公の男までも客観視された異色作。眩しい夏の光をとらえた撮影が素晴らしい。

3作観た「六つの教訓物語」の中では、もっとも素晴らしいと思った。この作品の中でのオッサンは、妄想するとともに「俺はわざと少女に振り回されている」と言い続ける。そうすることで、実は何も「本当に振り回されてる」という状態と変わらないという皮肉な現実がとても愉快だ。

俺は大人だ、俺は分かってる、俺は自分を客観視出来ている・・・いくらそう言い続けたところで、結局のところ彼は夏の陽射しの中の一人の登場人物でしかない。少女はかわいくて、その涙はかけがえのない一瞬の輝きで、オッサンはそれに憧れながら、決して近づくことが出来ない。本当に素晴らしい。