『ウンベルド・D』

同じく土曜日。シネマヴェーラヴィットリオ・デ・シーカ『ウンベルド・D』。

家賃を滞納して部屋から追い出された年金生活者の老人ウンベルト。物乞いをしようと思い立つがプライドが許さず、ついに自殺を図ろうと愛犬を抱いて線路に立つが…。主人公はデ・シーカの父親がモデルと言われている。高齢者の貧困、年金、孤独など、現代日本にも通じる悲惨な状況が、ネオリアリスモの冷徹なタッチで描かれる。

もう、このおじいさんの哀しさと言ったら・・・物乞いしようとして犬に帽子をくわえさせて、犬が一生懸命立つところとか涙無くして観られない。何かと助けてくれる若い女中さんがかわいいのが救いだが、彼女とてお金を持ってる訳でもなく、ひたすらに哀しい方向へと物語が続く。どうしても「俺の未来もひょっとして・・」とか考えてしまう。いかんいかん。

おじいさんを助けるために、彼女が一肌脱ぐとか、哀川翔みたいな兄ちゃんが現れてお金を工面してくれるとか・・そういう人情喜劇っぽい展開だったら救いがあるんだけどね。気持ちは全く晴れない。だけどラストシーンの美しさは、心にどーんと残るだろう。