「あの日、欲望の大地で」

水曜日。銀座テアトルシネマで「あの日、欲望の大地で」。

まだ初めの方の、農薬散布の飛行機が飛ぶシーンで、なぜだかじーんと感動してしまって、この映画は傑作だと思う。カルロス(この時点ではまだ存在する意味がわからない登場人物)の表情がとてもよくて、これが冒頭付近の不安そうな男と同一人物とは思えない。美しい空とか太陽とか揺れる穂・・・そこからキム・ベイシンガーを待つ男のシーンへ繋がっていき、未来(現在)=曇天もしくは雨で、過去=快晴、明るい。。という構造なのかと後になって気づく。

というか、こんなにも人間は「過去」に生きてしまうのかと思うと悲しくなる。ただ過去に背を向けて生きることは、ひょっとして向き合うことよりもツライことかもしれず、この映画はその辛さを、3つの時間を交互にシャッフルして語ることで特殊なものから普遍的なものにすることに成功しているように思う。時系列に直線として語られた場合、この陳腐になりかねないメロドラマが、微妙にずらされた視点から降ってくることで、自分の感情というものがいかに過去に拘束されているかを痛感するのだ。

現代/過去 ではなく、 現代/過去(1:死の前)/過去(2:死後) となっているせいで見る人間にグッと緊張感が増したような気がする。

マリアーナの少女時代を演じたジェニファー・ローレンスがすごかった。あと、物語の中核には直接関係しないカルロスがとてもいい。彼はとても静かな、この物語の語り部なんだろう。