「バーダー・マインホフ 理想の果てに」

シネマライズ「バーダー・マインホフ 理想の果てに」

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」と合わせて見るべき映画。学生運動から武装化し、テロリストとなり、世間から隔絶していく流れは日本とほぼ同じと言っていいのかもしれない。日本の暴力革命を標榜する集団が、セクト間闘争とかリンチとかに向かったのと比べると、ドイツ赤軍はひたすらに過激で行動的に見える。それは思想的にどうとかでなく、ドイツが地理的に/精神的に日本よりもパレスチナに近かったり、武器が手に入りやすかったりしたからだろうか?

同じだと思うのは、リーダーたちが逮捕された後に、奪還のために更に過激なテロに走る集団の狂気。当初はあったはずの、一般市民の犠牲を出さない・・・という不文律も徐々に崩れていく。これは共産主義に固有の悲劇でもなんでもなく、全ての集団が持ちうる可能性であり、それを「システム」と呼ぶのが今はもっともしっくりくる感じがする。

家族、会社、学校、国・・・全てのシステムは、最初はその目的のために動き、途中からはその目的のためでなく、システムを維持するために動き始める。そして最後には我々を抑圧するか、もしくは打倒すべき壁としてまた立ちはだかる。(そもそもは自分たちの為だった/理想の為だったシステムが、である)

どういうことかと言うと、システムが作られた時にはある理念を持って始動したわけですが、よくできたシステムというのはシステム個々に独立し始めるわけです。そのシステムが存続を要求し始めるわけです。すると、そのシステムの中にいる人が意志を発動できなくなってくる、という歴史を実は我々はずっと見てきたのではないか。

― Business Media 誠:ガンダムは作品ではなく“コンセプト”――富野由悠季氏、アニメを語る(後編) (3/4)

この言葉がよーくわかる映画でした。