「ルパン三世 1st.TVシリーズ」

シネマ・アンジェリカで「ルパン三世 1st.TVシリーズ」。「Aプロダクション演出グループ」とエンディングにクレジットされるのは、高畑勲(当時36歳)と宮崎駿(当時31歳)。

子供の頃、日曜日の正午と言えばルパン三世の再放送だった。関西だけかな?1stと2ndを延々とやってた気がする。だから俺は3話とも確実に全部見てるはずだが、14話以外はあんまり覚えていなかった。どれも今見ても新鮮でめちゃくちゃ面白い。


「11話 7番目の橋が落ちるとき」
ちょっとカリオストロの城の原型かも?と思わせる作品。どこともしれないヨーロッパの小さな街。ルパンが少女を助ける話。後にオープニングに使われるパトカーが桟橋に突っ込んでくるシーン、ワルサーP38を構えるシーン、どれもすごい。


「14話 エメラルドの秘密」
猫の眼にエメラルドというちょっと怖くて、推理小説っぽい設定が好きだった作品。今見るとファーストの初期には満開だった峰不二子のお色気が全然無いことに気付く。あれはあれで子供心にすごくドキドキしたのだが。


「19話 どっちが勝つか三代目!」
マルコヴィッチの穴の元ネタか?というドタバタ喜劇。アニメーション的に暴走していく後半がとにかく面白い。(ヘルメットに「全共闘」とかの文字があったりして、当時1971年を思わせる。71年10月24日からの放送だから、ちょうどこのルパン三世1stシリーズの放送中に連合赤軍事件が起こったことになる。)

アンニュイでごろごろしているのが元のルパンだったのだけど、僕らは僕らのやりたいようにやろうということで、もう少し勤勉で熱心な人たちにしました。そのほうが僕らの気分に会っていたからです。(宮崎駿

そして最後にドキュメンタリーが上映された。高畑、宮崎、そして大塚康生のインタビューが中心。印象的だったのは宮崎駿が「シラケてる暇なんかなかった。このアニメーション制作の現実からどうやって抜け出そうか必死だった。みんなが死にそうになるまで働いて、しかもそれが全部それぞれ別の会社の人で、総動員体制の無責任というものを作り出してる感じがした」(うろ憶え)というくだりに心打たれた。大塚康生いわく、当時の宮崎駿は3時頃まで働いて翌日には家でやった仕事をもって会社にやってくるような、ものすごい量の仕事をこなしていたそうだ。仮眠を1時間ほど椅子に座ったままとるだけ、とか。

我が身を振り返ると、それなりに大変な時もあるけど最近は概ね安穏と仕事をしている30代半ばなので、ああ、なんとうかそこまで追い込んで仕事を出来るというのを羨ましく思った。というか、そんな甘い感想を言ってる場合じゃないな、と背筋が伸びるような気持ちになって映画館を後にしたのです。

渋谷陽一のコメントがとてもいい。→“仕事としてのアニメ”を観ることは意味が大きい
そう、「仕事する」というのはこういう覚悟のことなんだろうなと思う。