愛のむきだし

日曜日。ユーロスペース「愛のむきだし」。237分、言葉にならない、まさに筆舌に尽くし難い経験をする。タイトルがばーんと出た瞬間にゾクッとする。ゆらゆら帝国のイントロが流れた瞬間にゾクッとする。パンチラキックの瞬間にゾクッとする。映画にあらゆる場面に力が満ちている。

この映画が素晴らしいのは、ストーリーが狂っているからかもしれない。尋常じゃない長さを一瞬も飽きさせることなく描いているからかもしれない。エロがたくさんあるからかもしれない。ゆらゆら帝国の音楽が素晴らしいから(「空洞です」「美しい」「つぎの夜へ」)かもしれない。主演の二人が頑張っているからかもしれない。その他の出演者もおかしな人たちばかりだからかもしれない。でもそんなことは全て些末なことでしかなくて、これは本当に完璧な「愛」についての映画だから素晴らしいのである。こんなにもまるだしの、裸の、そうむきだしの愛のことを描いた映画は今までなかったんじゃないかというくらい。しかもこれはどこかの映画館にばっかり通っているような人種に向けてだけじゃなくて、外部にもガバーッと開かれた映画になっている。20世紀少年の100分の1くらいしか観客は呼べないかもしれないけど、きっと100倍は長く後世に残る。

世界は地獄であり、全ては仕組まれた八百長で、何をやってもどうせ裏目に出る。女はさびしくてしょうがなくて、男はエロで出来ている。ただし、それら全てを超越し、全てを壊し、作り、世界を動かすものがあって、我々はそのことを愛と呼ぶのである。

ゆらゆら帝国の「空洞です」が未だに頭の中をぐるぐる回っている。

ぼくの心をあなたは奪い去った 俺は空洞 でかい空洞
すべてのこらずあなたは奪い去った 俺は空洞 おもしろい
バカな子どもがふざけてかけぬける 俺は空洞 でかい空洞
いいよくぐり抜けてみな穴の中 どうぞ 空洞


ゆらゆら帝国「空洞です」

わたしたちは、今は、鏡に映して見るようにおぼろげに見ている。しかしその時には、顔と顔とを合わせて、見るであろう。わたしの知るところは、今は一部分にすぎない。しかしその時には、わたしが完全に知られているように、完全に知るであろう。
このように、いつまでも存続するものは、信仰と希望と愛と、この三つである。このうちで最も大いなるものは、愛である。


コリント書 13章