幼年期の終わり

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

光文社古典文庫から出ている新訳。読了。

これを初めて読んだのは中学生の頃だったか。当時よりも今の方が衝撃的に感じる。恐怖でも希望でもない未来へのビジョン。科学的であるということ、幻視するということ、夢を見るということ、霊的なものと科学が見事に混ざり合った世界の終わりの物語。未だにこれを超えるビジョンというのは出て来ていない気がする。あえて言うなら、グレッグ・イーガンの「順列都市」とか「ディアスポラ」は、「幼年期の終わり」とは違うアプローチで人類を超えようとしている。

クラークはオーバーロードにもオーバーマインドにも会わずにこの世を去った。でも、もしかするとクラークの頭の中にはオーバーマインドが語りかけていたのかもしれないとさえ思う。SFというジャンルの中だけでなく、小説という形式のなかでも20世紀を代表する作品。