楳図かずお「14歳」を36歳で読む。

今更なのだが楳図かずお「14歳」読了。ちょうど学生時代に連載されていた漫画で、ときおり目にしたんだけどちゃんと読んだのは初めて。僕は基本的にちゃんと完結している漫画をいっきに読みたいという気持ちが強く、週刊の連載を1週ずつ追って行くということが出来ない。なにしろ今まで漫画週刊誌を買った記憶がほとんどないのだ。

だからこの文庫にして13巻の「14歳」も一気に読んだんだけど、余りの濃度に胸焼けしそうだった。こればかりはちょっとずつ読み進めた方がよかったかもしれない。というかこの狂気とハイテンションの物語を週刊連載していたというのはもう、常軌を逸した天才というほかない。

「14歳」は一言で言ってしまえば、子ども/それもかなり幼児の夢想や悪夢が結実したような未来世界の物語だ。そう書くとありきたりな想像力の物語のように思われるが、全然違う。その破壊力は凄まじく、楳図かずというのはひょっとして3歳時の頃の記憶が今でも鮮明にあるのではないか?と思わせるほどだ。特にUFO大襲来のカタストロフとかチラノザウルス号の中での戦いは、完全に異世界を見てしまった人の頭の中という気がする。ふとヘンリー・ダーガーの「非現実の王国で」ってこんな感じだろうか?と思ったりした。

人間は理性的であると同時に、夢を見たり、妄想にとりつかれたり、恐怖にうちのめされたりせざるを得ない。そしてほとんどの場合、理性の中に留まり続けなければいけない。芸術家という職業はそうやって常にこちら側とあちら側を架橋し、こちら側の人間にあちら側を垣間見させるためにあると言ってもいいだろう。「14歳」はその意味で相当に遠くまでを見せてくれた作品である。どうやっても自分の人生の中でこんなところまで(つまりは宇宙の果てまで)行くことは出来ない。出来るのは物語の中だけであり、それこそ人間が物語を必要とする理由なのだ。

Amazonで1冊ずつカートに入れて行くのが面倒で、全巻.jpを使った。ネットであってもまとめ買いというのはやはり至福である。

14歳 (1) (小学館文庫)

14歳 (1) (小学館文庫)