「凡人として生きるということ」はいい本でした。
- 作者: 押井守
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2008/07/01
- メディア: 新書
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「若者ぶるオヤジの愚かさ」と言ってちょいワル親父をこき下ろし、「若さには価値なんてない」と言い、更には若さを価値であると喧伝せざるを得ないこの世界の構造をきちんと洞察した上での開き直りがあって、でも社会と繋がりを持たずに生きるなんてつまらない/何者かになることを拒否することもつまらない・・、そして「自由」とは何かというテーマへと向かって行く。つまりそれは「他者を選びとり、受け入れることが人生」という言葉に繋がっていく。
人生とは常に何かを選択し続けることであり、そうすることで初めて豊かさを増していくものであって、選択から逃げているうちは、何も始まらないのだ。
こんな純度100%の言葉を、純度100%で受け入れている36歳の自分がいたりする。。おお、なんということだ。
本書には「性欲が強い人は子育てがうまい」「子どもを作る前に犬を飼え」とかもう自由過ぎて心配になってしまうような文章もたくさんあるのだけど、ここまで正直に自分を語ってもらえると本当に頭が下がるというか、こういう言葉であれば参考に出来るなと素直に思えるのである。(世に溢れる成功本の類いを見ると本当にげんなりするのだけど)いや、冗談ではないですよ。
ひたすらに作品を作ってきたということ、しかも失敗も酷評も、自分が天才でないということも、諸々全てを受け入れながら、戦いながら歳を重ねて来たということ、その自信がこういった言葉に繋がっているのだろう。「勝負」は諦めた時に負けが決まる。というのは余りも重い。押井守の映画監督としての軌跡を考えながら読むと、本当に正直に誠実に書かれた本だと思うし、その通り、正直に受け止めたいと思う。1日で読める本であっても、いい本というのはあるのだ。
あと、やっぱり「イノセント」も「スカイ・クロラ」も自分には合わなかったけど、どうしてもこの監督の映画を見なければ・・と思ってしまうのは、この本に書かれているようなパーソナリティの魅力によるところが大きいのかもしれない。天才じゃなくて凡人かもしれないけど、素晴らしい変人であることは確かだから。