吉田喜重レトロスペクティブ -熱狂ポンピドゥセンターよりの帰還-

土曜日。シネマヴェーラ吉田喜重レトロスペクティブ -熱狂ポンピドゥセンターよりの帰還-

特集上映の初日。劇場では吉田喜重監督と岡田茉莉子さんのサイン会が開催されていて、妻はちゃっかりパンフレットにサインしてもらっていた。

トークショー蓮實重彦氏×久保田智子氏。久保田智子って誰だろう?と思っていたら、なんとTBSのアナウンサーの方でした。なんでまたこんな人が・・と思ったが、意外にも言っては失礼だが、とってもちゃんと映画を見ている感じで驚いた。しかもあんな映画オタク度の高い危険な客を前に、蓮實重彦氏とトークをするなどという荒技をこなすという度胸がすばらしい。(それにPerfumeののっちに似てる。)

吉田監督と岡田茉莉子さんも最後は舞台にあがって挨拶があったのだけど、監督の言葉がかっこ良かったですね。映画は必ず私たちを裏切ります/映画を見るということは、とりもなおさず映画を見ない、ということでもあります/

そして映画「嵐を呼ぶ十八人」の上映。
舞台は呉。造船所で働く工員たち18人。派遣の期間工のガキたち。刹那的でどこか自暴自棄で、でも誰かとツルみたくて、怠惰と諦観に身を任せているように見えて、実は熱情を持て余している感じの少年たち。そして彼らの面倒を見る主人公は、同じく流れ者ではあるけれど、そろそろ落ち着かなくちゃな・・なんて思っている。呉には去年旅行で行ったばかりなので、どことなく見たような風景だった。

ブラスバンドのシーンが素晴らしかった。雨の結婚式に泣いた。ノブちゃんかわいい。広島市民球場のシーンもよかった。芦屋雁之助が若い。

バスの中のシーンでは、秋葉原の事件のことを考えてしまった。暗黙共同体へ−秋葉原事件で考えるなどを読みつつ、この映画が素晴らしいのは、彼らのような少年たちのことを皮相的な社会問題として描いていないところではないかと思ったりした。さすらう者は、いつになれば落ち着くのか。労働は続くよどこまでも。蒸気機関車は今日も彼らを乗せて、ひたすらに走るのだ。

嵐を呼ぶ十八人 [DVD]

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