『だれのものでもないチェレ』

日曜日。シネマ・アンジェリカで『だれのものでもないチェレ』。

1976年のハンガリー映画。洋服も着せてもらえないチェレ。ご飯もちゃんともらえず、ひどい仕打ちばかり受けるチェレ。悲し過ぎる状況で、チェレがそっと歌う歌うところがもう・・・でもなぜか泣くことはなかった。大人たちに怒りを感じこそすれ、泣くのはちょっと違う気がした。

かなしく、やさしいシーンが続くだけに、ラストシーンの激しさが目に焼き付く。悲惨な状況を嘆く映画ではなく、それと激しく戦う映画という宣言のようにも思えた。

ロマンポルノ・リターンズ『団地妻 昼下がりの情事』

木曜日。フラッと映画館に入る感じで、ユーロスペースで『団地妻 昼下がりの情事』。

主演の高尾祥子がよかった。地味だけどとても美しい女性を演じていて、映画の最初からずっと寂しそうで困ったような表情をしている。女子高生にカツアゲされちゃうシーンとかもう可哀想で可哀想で・・・。

情事の相手もどんづまりで、彼の息子はちょっと不気味な顔をしていて、二人で弁当を食べているところなんかは本当にやるせなくなる。そうやって出会った二人が過ごす夜は夢のようで、ああ赤ちゃんに戻りたい・・などという甘い夢はかなわず、やっぱり最後は現実へと向かう。うん、まあ正しいし悲しい結末。

どうせなら、これもう1本の『後ろから前から』と二本立てで公開して欲しかったな・・という気がする。気の滅入る陰鬱なエロと、馬鹿馬鹿しい狂躁劇をセットで観ることで、なんとなくもっと「映画」を感じられたような気がする。