『喜劇と格言劇集 緑の光線』

ユーロスペース「エリック・ロメール追悼特集上映 アデュー ロメール」。『喜劇と格言劇集 緑の光線』。

今回の特集中、もっとも好きな作品。タイトルはジュール・ヴェルヌの小説から。バカンスを精一杯楽しまなきゃというプレッシャーに押しつぶされそうになるデルフィーヌを見て、仕事を休めない日本も大変だけど、フランス人もたいへんやなー、それにしてもエリック・ロメールの映画にはまともに働いている人が全然出て来ないなーと思いながら観た。

大勢の人といてもついついポツーンと一人になってしまう彼女の姿、一人は嫌な癖に愛想良くも出来ず、いつも「ここはわたしの居場所じゃない」と泣いてしまう夏というのは本当に切ない。・・・まあ、ただの自意識過剰の身勝手ちゃんにも見えるけど(笑)

ただそうやって一人海辺を歩く彼女が、『緑の光線』について話すおばさんたちの会話に耳を傾けて、そっと日没を眺めるシーンは本当に素晴らしく、その風景を今思い出すだけでも涙がこぼれてしまいそうになるのである。いま、この一瞬はいましかないということ。全てはすぐに消えてしまうということ。もう戻らないということ。そういうことにはっと気付いてしまう瞬間についての映画。