「股旅フットボール」
- 作者: 宇都宮徹壱
- 出版社/メーカー: 東邦出版
- 発売日: 2008/04
- メディア: 単行本
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特に気になったのは、やはり故郷、滋賀県のサッカー事情。FC Mi-OびわこKusatsuと、佐川SC(佐川東京と大阪の合併チーム)、滋賀FCがしのぎを削る状況で「群雄割拠の湖国」などと書かれていて、いつのまにそんな県になっていたのか?と思ってしまう。(まあそろそろ東京に来てからの方が滋賀にいた時期より長くなるんだけど。)特に今年JFL昇格したFC Mi-OびわこKusatsuが、全然サポーターがいないのに決勝大会を勝ち上がってしまう様子とかは、なんとなく県民性を考えて納得してしまうような気もする。なんとなく「熱くなる」ことを恥じるんだよね、多分。
あとは「カマタマーレ讃岐」は有名だけど、「とかちフェアスカイジェネシス」とか、「ファジアーノ岡山」とか、。もう全然知らないチームの紹介が色々あって(特にFC田ゼルビアの「ひとりサポ」の話とかは面白かった)、まさに「4部リーグからこの国のサッカーを照らし出す」というこの本の目的は達せられていると思う。すっかりJ1のゲームしか見なくなったけど、そもそもはサッカーを見る時に別にJ1である必要など何も無かったのに、今やこうなっている自分を振り返る意味でも、この地域リーグの物語は新鮮だった。
そしてあとがきで書かれている、「地方格差」とそこからの「謀反の物語」としてサッカークラブ、という視点。この物語が、まさに今始まったばかりだということがよくわかるし、是非著者にはこれからもこういった視点のテキストを書き続けてもらいたい。
僕自身、「シャッター商店街が続く」と言われるような田舎の出身であり、東京という爛熟の極みの都市でサッカーを消費する身として、「股旅フットボール」が描く光景は、過去であり、同時に未来であるような気がしている。なぜ人はサッカーに引き寄せられるのか。なぜサッカーチームを作ろうと思うのか?そういった問いに対する明確な答えは本書にはない。本書にあるのは「問い」である。100年構想という理想は、もしかしたら「100年抗争」という現実に置き換えられながら、これからまさに実現していくのかもしれない。そんなことを考えると、まさにそういったプロスポーツとしてのサッカーの活断層をあらわにした本書の価値がより分かるだろう。これからの日本サッカーを変えるとしたら、それは代表の活躍ではなく、こういった地方のチームからの「抵抗」や「抗争」の物語であるかもしれないと思った。